このページでは、製品化へのヒントや、製品になるまでの裏話など、オリハラ製品にまつわるお話を掲載しています。
第9章は「エチケットーン最大の事件!」です。
連載漫画に取り上げられた!
注文が増えて、てんてこ舞いしている中で、エチケットーンにとって最大の事件は、新聞の連載漫画「フジ三太郎」に取り上げられたことだった。
三太郎の上司にあたる女性係長が音量を上げてエチケットーンを使っているところが、四コマ漫画に面白おかしく描かれている。作者のサトウサンペイさんは、知り合いの女性からこの節水消音器のことを聞いたのだそうだ。
折原はサトウさんのところへ飛んでいき、
「よくぞ描いてくださいました」
と、お礼をいうのと一緒に、宣伝パンプレットに漫画を使わせていただきたい、と願い出て快諾してもらった。
それから10日後、この好機を逃がしてはならないと、新聞社にエチケットーンの広告をした。資本金わずか800万円。名もない会社の広告が、タテ3段の大きさで、初めて大新聞に載った。
漫画みたいな話しがほんとに漫画になったときから、かえってこの器具は大真面目な商品として市民権を得たといえる。
その後、エチケットーンは売れ続け、どんどん需要が広がっていった。
「売れる、と見て大手メーカーが参入してくることも予想しています。こっちはゲリラみたいなものだけど、製品の質の向上で対抗していこう、と考えていますよ。」
たとえば、消音器とタンクを結んで、消音スイッチが作動している間はタンクの水がでない仕組みを開発中だ。これだと、消音器を押したうえで、つい習慣で水も流す、という二重操作ができなくなり、節水がより効果的になる。
消音器の音を、もっと、ほんものに近づける工夫も怠っていない。しかし、あんまりほんものらしくなると、用を足したあとも水を流さずにこっちのボタンを押して、きれいに流したようなつもりになってしまうのが難だそうだ。
アメリカへの輸出は?
折原は、以前奥さんを伴って、アメリカへまた勉強の旅にでた。今度は、エチケットーンが輸出できないか、と考えたからだった。
「女房にあちこちでトイレに入ってもらって、様子を聞いたんです。しかし、とても消音器が必要なんて雰囲気じゃない。輸出はやめました。」
空港、駅などのトイレへ奥さんが行ってみると、ドアの下半分は素通しで、便器に腰掛けた先客の足が丸見えだ。
トイレの中で犯罪が起きるのを防ぐためだろうが、それにしても中がのぞけるくらいだから、音は筒抜け。そんなところでアメリカの女性は平気で用を足している。
完全な内需用で、決して貿易摩擦を引き起こすことのない、エレクトロニクス商品の誕生である。
おわり
エチケットーンに関する製品化への話は今章で終了です。
次章は新ネタで登場します。お楽しみに!
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