このページでは、製品化へのヒントや、製品になるまでの裏話など、オリハラ製品にまつわるお話を掲載しています。第7章は「画期的新商品が開発されるまでの経緯その3」です。
85ホーンの電気ノイズで「恥ずかしい」音を消す
電気メーカーに勤める知人に、なんとかコストを押さえて電気的に音が出せる器具がつくれないか、相談してみた。
さすが専門家で、あっさり答えが返って来た。IC、トランジスタ、ダイオードを使って回路をつくり、電流を通してやれば音が出る。電子楽器もそうした回路によってできているのだが、この場合はもっと単純な雑音を出してやればいい。いってみれば、ラジオのガ アガアいう雑音のようなものだ。
これを増幅してスピーカーから流すと、なるほど、ざあっ、と水がほとばしるのによく似た音になる。
音の持続時間は、コンデンサで調節すればよい。容量が大きいのを使うと、長時間音が出る。
この回路を電話の受話器に似た形のプラスチック・ケースに入れて、簡単に水洗音発生器ができてしまった。乾電池でも、100ボルト電源にアダプターをつけても使える。
画期的新商品、その名は「エチケットーン」
「なんだ。こんなことなら初めからテレコなんかで苦労せず、専門家に頼めばよかったんだ」
エチケットーン、という名は折原征一が考えた。
ただ一つ苦心したのは、音量をどのくらいにすればいいか、ということだった。
女性は尿道が男性より短い為、ほとばしる水の勢いが強くなって、大きな音になることは常識的に知っている。しかし、実際にどの程度の音量になるのか、見当もつかない。
「やむをえません。女房や、行きつけのバーのママに頭を下げて、実験台になってもらいました」
空きっ腹にビールをがぶがぶ飲む。じきトイレに行きたくなるのを我慢してもらい、これ以上は駄目、というところで放出音を騒音計で計った。
若い女性だと、もっと元気のいい音になるかも知れない、と思い、社員の妹さんに三拝九拝してモデルを頼むこともした。
「その結果、85ホンまで音が出るようにしておけば大丈夫!とわかりました」
これは、都会を走るうるさい電車内の騒音と同じ音量にあたる。
完成したエチケットーン(左の写真は、エチケットーン マークⅡ)には、芳香剤もつけた。このあたりが電気屋でなくトイレ屋の芸の細かいところだ。
さて、これをどういうふうに販売ルートに乗せればいいか、考えているうちに女性週刊誌が取材に来た。渇水のときの新聞記事を見て、女性に福音、という狙いで取り上げようというのだ。
記事になったとたん、結婚式場やレストランから、2個、3個と小口ながら注文が入り出した。
「マスコミの力といのは、えらいもんだなあ。小さい新聞記事が発端で、こうやって現実に注文が来るんだから」
新聞広告にさえ縁のない仕事をしてきた折原は思った。
しかし、そのときは、それきりだった。折原製作所がほんとうにマスコミの力の大きさに気づくのは、もう少しあとになってからである。
つづく
次章は『エチケットーンに驚天動地がやってくる!』です。
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